「実物資産としての森林」の可能性について考える 第1回
こんばんは。意識低い森林学徒です。
Tがこのシリーズを担当します。
全体の構成が定まっているわけではなく、シリーズの全体像や構想も詰め切れていないため、章立てが不十分になることをご了承ください。
1.シリーズの前提
本シリーズでは、森林の有する多面的機能のうち、「物質生産機能」に着目します。その中でも、「木材生産」に焦点を絞ります。
2.用語の定義
林野庁等の資料での使用法・定義と違いがありますが、議論の単純化と認識齟齬の防止のため、シリーズで頻繁に使われると思われる単語について、以下のように定義します。
・森林管理:森林の多面的機能を維持すること、またその活動
・林業:森林において木材生産を行うこと
・市町村有林:市町村の管理する森林
・私有林:法人・個人の所有する森林
・担い手:森林管理や林業に関わる人及び組織
・林業従事者:担い手のうち、森林で伐木造材等の現場作業に従事する人
3.問題意識
日本において、林業は衰退の一途をたどっている。1964年制定の林業基本法により「産業としての林業」の振興と「林業従事者の地位向上」が大きな目的の一つとして定められたが、その目的は未だ達せられずにいる。
最近では木材自給率の回復や木材輸出額が増加するなど明るい話題もあるが、かつての勢いはなく、他の林業先進国の背中は遠い。
林業が衰退する原因として常に挙がるのが、「林業は儲からない」という言説だ。実際、50年生のスギ人工林を皆伐した際、1ha当たり130万円弱の収益に対し、コストはそれを上回っている。
こうした苦しい状況の中で、なんとかして林業に投資を呼び込み、林業を盛り上げたいのである。林業に投資してもらうためには、投資に見合うリターンが必要であり、林業は投資家が期待するリターンを生み出すことができるのか考えたい。
比較対象として、不動産を挙げる。不動産は森林と同じく実物資産の一つである。不動産への投資は種類により差があるが、およそ年3~5%程度のリターンが得られる。
4.おおまかな構想
森林が生み出すリターンを算出する。この際、ファイナンスの基礎理論を利用する。
森林が期待するリターンを生み出せない場合、どうすれば期待リターンを生み出せるか考える。
森林が期待するリターンを生み出せる場合、どうすれば森林をポートフォリオに組み入れてもらえるか考える。
今日はここまでとします。
じっくり書いていくつもりですので、どうかお付き合いください。